中性子利用研究に関するセミナーの開催情報です
スイス連邦工科大学 教授 Gernot KOSTORZ様
統合支援施設2階 大会議室 14時30分〜
Kostorz先生はゲッチンゲン大学で学位取得後、アルゴンヌ国立研、ILL、マックスプランク研究所を経て、1980年からスイス連邦工科大学(ETH)の応用物理部門の教授として、材料組織と特性との関係解明に多くの成果をあげておられます。この間、ヨーロッパ材料科学連合会長を初めとして、多くの要職を勤められました。ILL時代には設置直後の世界最初の中性子小角散乱専用装置を利用して金属材料の相分離、相転移の研究にSANSを適用した研究で多くの先駆的な成果を1970年代に挙げておられます。
その後は中性子・X線小角散乱、および回折斑点周囲の散漫散乱を利用した、相転移、欠陥構造の解析で常に世界をリードした研究成果を発表されると同時に、小角・散漫散乱分野において現在ヨーロッパで活躍中の多くの研究者を育成されました。
2006年にETHを引退されましたが現在もIUCr(国際結晶学会)機関誌のチーフエディターを努められる等、勢力的にご活躍です。
本講演では、先生のこれまでの成果をいくつかご紹介いただき、材料研究における小角散乱の重要性についてお話いただく予定です。
北海道大学大学院工学研究院 教授 古坂 道弘様
統合支援施設2階 大会議室(第1食堂2階)15時45分〜
懇親会:17時半から 統合支援施設1階西側
本当は中性子散乱が一番使い易いはずなのです。バルクの内部平均の測定なので、試料を薄くする必要もないですし、表面を気にすることもありません。ですから、本当は新しい試料ができたならまずは中性子散乱を測定するのが本当だと思うのです。
でも...中性子の施設は身近にはない場合が多く、申請してからしばらくしないと使えません。X線回折だったらほとんどの人が使った経験がありますし、どう解析すればよいかイメージできる人が多いと思います。中性子は使ったことがある人があまりいない状況ですし、誰に相談したら良いかもわからないのが普通です。
ラボラトリ中性子源が普及すれば研究方法のパラダイムシフトが起きます!
X線や電顕では試料準備が面倒ですからとりあえず中性子でみてみることになるでしょう。中性子で何か見え始めれば、電顕の試料を準備するなり、最後はJ-PARC中性子施設で実験することになるかも知れません。X線の測定との組み合わせでもっと情報量を増やすことも出来ます。そういえば学生時代にラボラトリ中性子源で小角散乱の実験をやった覚えがある、という研究者の数は飛躍的に増えるでしょう。このセミナーではラボラトリー中性子源につけるための中性子光学素子を使った小型の中性子小角散乱装置、そこで得られた予備的データなどについてお話します。
北海道大学大学院工学研究院 応用量子ビーム工学分野 准教授 加美山 隆様
統合支援施設2階 大会議室(第1食堂2階)15時半〜
懇親会:17時半から 統合支援施設2階小会議室
北海道大学では小型の電子線型加速器を用いてパルス中性子をつくりだし、さまざまな研究に利用してきました。
中性子の発生から測定手法まで、その成果は最先端の大型加速器中性子源の建設や利用にも取り入れられ、
効果的な中性子研究を進める上で役立っています。
本講演では、パワフルな大型施設の対極にある小型中性子源施設でどのようなことが出来ているのか、
北海道大学施設の実例を示しながら紹介していきます。またそれを元に、小型中性子源の利点とこれからの役割、今後何を目指すのか、
議論していきます。
ウィーン工科大学 准教授 長谷川祐司様 (理研客員研究員)
2012年2月7日(火曜日)15時〜 RIBF棟2階大会議室
懇親会:17:30より第1食堂(西側)(統合支援施設1階)
イノベーション推進センターならびに 仁科加速器研究センター
ハイゼンベルクの不確定性原理は、量子力学の教科書の初めに出てくる基本原理とし
て知られている。ケンナードやロバートソンによって示された標準偏差を用いた不確
定性関係と異なり、測定の誤差と擾乱に関する不確定性関係は証明がなされてなく、
ただ「直感的な」関係式として長い間信じられてきた。最近、小澤によりこの誤差と
擾乱に関する不確定性関係が数学的に示された。我々は中性子のスピンの連続測定に
よってこの小澤によって示された不確定性関係に関する検証を行った。その結果、ハ
イゼンベルクによって示された不確定性関係が破れ、小澤の示唆した不確定性関係が
成立することが実験的に示された。この結果はNature Physicsに発表され、多くの新
聞にも取り上げられた。
(“Experimental demonstration of a universally valid error-disturbance
uncertainty relation in spin measurements” J.Erhart, et al. Nature Physics
(2012) 15 Jan.)
(独)物質・材料研究機構 NIMS 主席研究員 大沼正人様
2011年9月12日(月曜日)15:30~ 統合化支援施設(第1食堂)2F 大会議室
X線と中性子の各元素との相互作用の差を利用した研究はこれまでも数多く行われてきました。 しかしながら、その利用法は水素やリチウム等の軽元素に対して「X線ではよく見えず、中性子では見える」ことや、 酸化物超伝導体のように「基本構造はX線で決定し、軽元素位置を中性子で精密化する」といった「相補的な利用」が主なものでした。
回折実験ではこのような相補的な利用でも十分な情報が得られますが、含まれる情報量は多くても得られるプロファイルはdiffuseな曲線である 小角散乱法ではより積極的な「複合利用」が極めて有効です。我々は右目と左目を使うことで「距離」という新しい情報を得ています。 同様にX線と中性子との「2つの目」を使うことで「組成」という新しい情報が小角散乱法でも得られるようになってきました。
NIMSでは、小角散乱法が本来得意とする不均一構造のサイズ、数密度の評価と新手法による組成情報の抽出により各種金属材料の微細組織定量化を進めています。本講演ではそれらの結果を示しながら、材料開発に 小角散乱法が真に貢献していく上で「小規模」さらには「ラボレベル」の小角散乱装置が如何に重要であるかをご紹介します。
京都大学 原子炉実験所 杉山 正明様
2011年7月28日
大河内記念ホール
良く知られているように中性子線には以下の利点がある。